【退職後の健康保険】どれを選ぶ?3つの選択肢と手続き方法などをわかりやすく解説!

お仕事

会社を退職すると、それまで加入していた健康保険(社会保険)から外れるため、健康保険の切り替え手続きが必要です。

「何に加入すればいいの?」「いつまでに手続きすべき?」と迷う方のために、この記事では退職後の健康保険について、選択肢・期限・手続き方法などをわかりやすくまとめました。

☆退職後の健康保険、3つの選択肢とは?

退職後は以下の3つのうち、いずれかの健康保険に加入する必要があります。

  1. 国民健康保険(市区町村が運営)
  2. 健康保険の任意継続(前の会社の保険を延長)
  3. 被扶養者になる(配偶者などの健康保険に入る)

①退職後の国民健康保険とは?

会社を退職すると、これまで加入していた社会保険(健康保険)の資格を失います。退職後は、健康保険の空白期間を作らないために、14日以内に新しい保険への加入手続きを行う必要があります。今回は、退職後に国民健康保険(国保)へ切り替える方法や注意点を詳しく解説します。

1.国民健康保険とは?

国民健康保険(国保)は、市区町村が運営する公的医療保険制度です。会社員や公務員などが加入していた健康保険をやめた人や、自営業・フリーランスなどが対象となります。

2.国保に切り替えるケース

  • ・自営業を始める場合
  • ・転職までに期間が空く場合
  • ・家族の扶養に入れない場合
  • ・任意継続より保険料が安くなる場合

3.手続き期限と窓口

<手続き期限>

退職日の翌日から14日以内が原則です。期限を過ぎても加入はできますが、保険料は退職日の翌日にさかのぼって請求されます。

<手続き窓口>

退職日の住所地を管轄する市区町村役所の「国民健康保険課」または「保険年金課」などで手続きします。

4.手続きの流れ

  1. ①退職
  2. ②会社から健康保険資格喪失証明書を受け取る
  3. ③14日以内に市区町村役所で国保加入手続き
  4. ④国保保険証の受け取り(即日〜1週間程度)
  5. ⑤保険料を納付(口座振替または納付書)

5.必要書類

  • ・健康保険資格喪失証明書(前職または健康保険組合から取得)
  • ・マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類(運転免許証など)
  • ・印鑑(自治体によっては不要)
  • ・退職日が分かる書類(離職票や退職証明書など)
  • ・銀行口座がわかるもの(口座振替の場合)

6.国民健康保険料の計算方法

国保の保険料は自治体によって異なりますが、主に以下の要素で決まります。

国民健康保険の保険料(国民健康保険税)は、

  1. 医療分保険料
  2. 後期高齢者支援金分保険料
  3. 介護分保険料(40歳以上65歳未満)

この3つの合計額からなります。

そして、それぞれについて、所得割・資産割・均等割・平等割の4つのポイントから保険料を算出します。

  • 所得割:前年の所得に応じた割合(総所得金額から基礎控除額(33万円)を引いた額に保険料率を掛けて算出→旧ただし書き方式)
  • 均等割:加入人数ごとにかかる定額(加入者数×均等割額)
  • 平等割:1世帯ごとの定額(金額・割合(%)は、各市町村が個々に定めます。)
  • 資産割:固定資産税に応じた額(固定資産税額×料率→一部自治体のみ)

前年の所得が高かった場合、退職直後でも保険料が高くなる可能性があります。

計算式の例 その1(東京都千代田区)

区分医療分
(全ての人)
後期高齢者支援分介護分
(40~64歳の人)
所得割額所得の6.13%所得の1.96%所得の0.77%
資産割額なしなしなし
均等割額31,200円8,700円13,200円
平等割額なしなしなし

計算式の例 その2(北海道札幌市)

区分医療分
(全ての人)
後期高齢者支援分介護分
(40~64歳の人)
所得割額所得の10.5%所得の2.74%所得の2.79%
資産割額なしなしなし
均等割額17,630円4,640円5,310円
平等割額28,630円7,540円6,560円

計算式の例 その3(徳島県徳島市)

区分医療分
(全ての人)
後期高齢者支援分介護分
(40~64歳の人)
所得割額所得の11.7%所得の3.5%所得の2.4%
資産割額固定資産税の36%なし固定資産税の7.2%
均等割額31,400円7,400円7.700円
平等割額24,000円5,600円4,000円

保険料の上限額

保険料についてはそれぞれ上限があり、毎年見直されています。

2025年度現在の上限(賦課限度額)は

  • 医療分:66万円
  • 後期高齢者支援金等:24万円
  • 介護分保険料(40歳以上65歳未満) 17万円

総額で109万円となっています。

上限額は、毎年数万円ずつ上がる傾向にあります。

7.保険料を安くする方法

退職後に収入が減る場合、国保の減免制度を利用できる可能性があります。

  • ・所得減少による減免(退職や休業で所得が大幅に減った場合)
  • ・退職者医療制度(60~65歳未満で厚生年金受給者が対象)
  • ・低所得世帯の軽減措置

減免は申請しないと適用されないため、必ず役所の窓口で相談しましょう。

8.任意継続との比較

項目国民健康保険任意継続
運営主体市区町村健康保険組合・協会けんぽ
保険料計算前年の所得基準在職時の標準報酬月額基準
扶養制度なし(全員分の保険料発生)あり(扶養家族は保険料不要)
加入期間制限なし最長2年
保険証発行即日〜1週間程度申請から約2週間

9.まとめ

退職後は、健康保険の空白期間を作らないよう、14日以内に国民健康保険の手続きを行いましょう。前年の所得によって保険料が高くなることもありますが、減免制度や任意継続との比較で負担を減らせます。迷ったときは、早めに役所や健康保険組合に相談することが安心です。

②退職後の健康保険「任意継続制度」とは?

会社を退職すると、これまで加入していた健康保険の資格を失います。このとき選択肢のひとつとなるのが「任意継続被保険者制度(任意継続)」です。
任意継続とは、退職後も最長2年間、在職中の健康保険を継続して利用できる制度です。

1.加入条件

任意継続に加入するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • ・退職日の前日までに継続して2か月以上健康保険に加入していた
  • ・退職日の翌日から20日以内に申請する

2.手続きの流れ

  1. ①会社から「健康保険資格喪失証明書」を受け取る
  2. ②加入していた健康保険組合または協会けんぽに連絡し、申請書を取り寄せる
  3. ③必要書類と初回保険料を20日以内に提出・納付
  4. ④任意継続被保険者証を受け取る

3.必要書類

  • ・健康保険資格喪失証明書
  • ・任意継続被保険者資格取得申出書
  • ・本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
  • ・印鑑
  • ・初回保険料

4.保険料の計算方法

任意継続の保険料は、在職時の標準報酬月額を基準に計算されます。会社負担分がなくなるため、在職中の約2倍の保険料になります。
ただし、健康保険組合や協会けんぽには標準報酬月額の上限があり、高所得だった人は保険料が下がるケースもあります。

具体的な計算例

例えば、退職時の標準報酬月額が30万円で、健康保険料率が10%の場合、保険料は以下のように計算されます。

  • 退職前の被保険者負担分:30万円 × 10% ÷ 2 = 15,000円
  • 任意継続被保険者の負担分:30万円 × 10% = 30,000円

このように、任意継続被保険者制度を利用する場合、保険料の全額を自己負担する必要があるため、退職前の約2倍の金額を支払うことになります。

5.任意継続を選ぶメリット

  • 保険内容が変わらない:在職中と同じ医療給付や付加給付が利用可能
  • 扶養制度が使える:配偶者や子どもを扶養に入れられ、保険料は増えない
  • 自治体により国保より安い場合がある:前年所得によって国保が高くなる人には有利

6.任意継続のデメリット

  • 保険料は全額自己負担:在職中は会社と折半していた保険料を全額払う必要がある
  • 2年間しか利用できない:加入できるのは最長2年
  • 途中でやめられない:原則2年間は国保などに切り替え不可(例外あり)

7.任意継続がおすすめな人

  • ・扶養家族がいて、国保にすると保険料が高くなる人
  • ・前年の所得が高く、国保が割高になる人
  • ・在職中の健康保険に付加給付や特典が多い人

8.国民健康保険との比較

項目任意継続国民健康保険
運営主体健康保険組合・協会けんぽ市区町村
加入期間最長2年制限なし
扶養制度あり(保険料増額なし)なし(全員分の保険料発生)
保険料計算在職時の標準報酬月額基準前年の所得基準
保険証発行申請から約2週間即日〜1週間程度

9.まとめ

任意継続制度は、退職後も在職中と同じ保障を受けられる安心な制度です。ただし、保険料は全額自己負担であり、最長2年間という期限があります。
国民健康保険と比較して保険料や保障内容を確認し、自分に合った制度を選びましょう。
加入を希望する場合は退職後20日以内という期限を忘れずに、早めに手続きを行ってください。

③退職後に家族の健康保険の「被扶養者」になる方法とは?

会社を退職すると、これまで加入していた健康保険の資格を失います。新たに保険に加入する方法はいくつかありますが、その中でも保険料の負担がなくなる方法が「家族の健康保険の被扶養者になる」ことです。
今回は、退職後に被扶養者になるための条件や手続き方法、注意点を詳しく解説します。

1.被扶養者になるとは?

被扶養者とは、健康保険に加入している家族(被保険者)に扶養される立場で、その健康保険の保障を受けられる人のことです。
被扶養者になると、保険料はかからず、医療給付や出産育児一時金などの保障を受けられます。

2.被扶養者になれる条件

健康保険組合や協会けんぽによって細かい基準は異なりますが、一般的な条件は以下の通りです。

  • 年収が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)
  • ・収入が被保険者の年収の半分未満
  • ・同居していること(親や祖父母などの場合は条件あり)
  • ・主に被保険者に生計を維持されていること

※パートやアルバイト収入がある場合は、月額108,333円未満(交通費込み)が目安です。

3.被扶養者になれる範囲

被扶養者の対象は次の家族です。

  • ・配偶者(事実婚含む)
  • ・子ども・孫
  • ・両親・祖父母
  • ・兄弟姉妹

※同居要件があるケースや、三親等内の親族までなど、組合ごとに細かいルールがあります。

4.手続きの流れ

  1. ①退職後、会社から「健康保険資格喪失証明書」を受け取る
  2. ②被保険者(家族)の勤務先へ「被扶養者(異動)届」を提出
  3. ③必要書類を添付して申請
  4. ④健康保険組合や協会けんぽで審査
  5. ⑤被扶養者として認定されると保険証が発行される

5.必要書類

健康保険組合によって異なりますが、一般的には以下が必要です。

  • ・健康保険資格喪失証明書(退職した本人の分)
  • ・被扶養者(異動)届
  • ・続柄を証明する書類(住民票など)
  • ・所得証明書または雇用保険受給資格者証
  • ・退職証明書または離職票
  • ・その他、必要に応じて収入を証明する書類

6.被扶養者になるメリット

  • 保険料がかからない:加入している間、保険料負担がゼロ
  • 保障内容が変わらない:被保険者と同じ医療給付を受けられる
  • 手続きが簡単:国保や任意継続に比べて負担が少ない

7.注意点

  • ・収入が基準を超えると被扶養者資格を失う
  • ・審査に時間がかかる場合がある(1〜2か月程度)
  • ・雇用保険の失業給付を受給中は、日額が基準を超えると加入できない

8.国保・任意継続との比較

項目被扶養者国民健康保険任意継続
保険料不要所得に応じて発生在職時の約2倍(会社負担分も自己負担)
加入期間制限なし(条件を満たす限り)制限なし最長2年
扶養制度ありなしあり
手続き先被保険者の勤務先市区町村役所健康保険組合または協会けんぽ

9.まとめ

退職後に家族の被扶養者になると、保険料負担なしで医療保障を受けられる大きなメリットがあります。ただし、収入制限や同居要件など条件があり、審査もあります。
国民健康保険や任意継続と比較し、自分の収入や家族の状況に合わせて選びましょう。
申請には時間がかかることもあるため、退職後は早めに家族の勤務先へ相談することをおすすめします。

④それぞれの特徴を簡単に比較すると…

保険の種類加入先保険料対象者
国民健康保険市区町村前年の所得によって決定基本的に誰でも加入可
任意継続保険退職前の健康保険組合全額自己負担(通常の約2倍)2年以上加入していた人
扶養に入る配偶者の会社など原則0円収入が一定額以下の人

⑤どれを選べばいいの?

迷ったときは以下を参考にしてください。

  • ✔ 退職直後に収入がない → 扶養に入る(条件を満たすなら一番経済的)
  • ✔ 医療機関によくかかる → 任意継続(保障内容が充実している場合あり)
  • ✔ 年収が低かった人 → 国民健康保険だと高額にならない可能性あり

いずれにせよ、比較・見積もりをしてから選ぶのがベストです。

⑥まとめ

退職後の健康保険の切り替えは、放置すると「無保険状態」になってしまうリスクがあります。

切り替えの手続きは原則14日以内。早めに行動し、自分に合った保険の種類を選びましょう。

後悔しないためにも、家族の扶養・保険料・保障内容をよく比較して決めることが大切です。

健康は何よりも大事。保険の切り替えで安心を手に入れましょう。

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